ネットに公開された作品と著作権
私は著作権に執着心がある。
権利意識が高いためだろうか、お人好しでないことは確かだ。
自分の作品の著作権を主張するからには、作品を作る際には他人の著作物には敬意を払う。
ここでいう著作物とは、プログラム、写真、イラスト、画像のことだ。
私は芸術家、アーティストではないので、他人から「こんなものを作って欲しい」と依頼を受けて、その依頼内容を要件定義して、アプリに具現化することでその代償を受け取り、米や味噌を買って生きている。
依頼する人の中には、「このアプリをオマージュしたい」「このアプリをリスペクトしたものにしたい」という人がいるし、
YouTubeに掲載されているクリエイティブ・コモンズライセンス楽曲やiTunesでダウンロードした楽曲をアプリで使って欲しいという人もいる。
そのような依頼者には、
・アプリや楽曲には著作権という作成者の権利があるので二次利用したり、アプリの作りをそのまま真似たりするのは法律違反になり懲役刑になること
・YouTubeのクリエイティブ・コモンズライセンスはYouTube内でしか使用が許諾されていないこと
を説明し理解してもらう。
「ものづくり」や「創作」には、他の人間が行う行為と同様、コンピュータとインターネットが不可欠になっている。
学術論文を書いたり、ロゴデザインをする際にも、当然ながら「ネット」を利用して過去の文献を調べたり、同じモチーフのデザインを調べたりするわけだ。
ここまでのネット利用は合法だ。
しかし、人間の心は弱いもので、
「この写真、今回のデザインに使うモチーフとしてぴったりだ。」
「このサイト、有名でもないし、どうせ分からないだろう。」
本屋さんで万引きする中学生と同じ思考だろう。
自分の作品にネットで見つけた写真を加工して使ってしまう。
これは違法で犯罪だ。懲役刑などの刑事罰が待っている。万引き、窃盗、泥棒と全く同じだ。
自分の人生を棒にふることになる。
この簡単に誰でもできてしまう犯罪が著作権法違反行為なのだ。
スマホというのは、キャリアに数千円の月額料金を払っていれば、いろんなアプリが無料で使える。
ネットも同様に、いろんな情報を無料で見れるし、YouTubeなどでは動画や映像が無料で見ることができる。
気に入った情報があれば、コンピュータに保存しておけるし、画面に映った画像や映像をキャプチャして簡単に二次利用もできてしまう。
1993年にインターネットが一般に開放されたとき(いや、BBSで自分の作品を公開できるようになった1980年代か)から、技能がある人の「見てもらいたい」という意識と利用者の「タダという最高のお得感」が相まって、情報と呼ばれる多数作品(文章、アプリ、写真、動画)で溢れるようになった。
この頃は、シェアウェア、フリーウェア、パブリックドメインという異なる概念があり、「無料で利用してよいが著作権は放棄しているわけじゃないよ」と表明する作者が多かった。
具体的にいうと、芸能人がスマホで撮影して、ブログに掲載している写真を個人的に利用するには著作権違反にはならない。
しかし、他人の作品を利用して自分の作品に含めてしまうと刑事罰の犯罪になる。泥棒だ。
写真や画像を自分の作品に含めて利用したいという需要を満たすため、著作権フリーCDROM作品というものがあった。CDROMを購入すれば利用規約の範囲で自由に使えるというものだった。
私が考えるところでは、この方式のイメージが頭に残っている人が大勢いて、その事が「ネットにどうぞと言わんばかりに置いてあるものを自分のコンピュータにダウンロードして保存した段階で、所有権は自分に移り、自由に使っても構わない」という、作品を「所有する」ことと「作品の著作権がある」ことを同一視する傾向の源泉ではないかと考えている。
現在では作品を広く利用させるために、CC(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス)という形態が利用されている。これは大雑把に言えば「無料で利用してよいが著作権は放棄しているわけじゃないよ」ということだ。
ただし、作者によってライセンスの範囲や詳細は異なるので、サイトごとのライセンスを確認する必要がある。
著作権法には「アプリ」に著作権があるとは書いていないからアプリには著作権がないと思っている人すらいる。
「オマージュ」とか「リスペクト」とかを平気で使う人は信用しないほうがいい。
「真似する」、「著作権なんて関係ない」と言っているに等しいということを理解してほしい。